(1)評価の原理は「貢献度」および「協働性」
「組織(企業)」とは、何らかの目的を達成し、価値を実現しようとする人々の協働体なのですから、その構成員の評価原理をひと言で言うなら、貢献度、即ち、組織や企業の目的の達成や価値の実現にどれだけ貢献したかです。
また、組織や企業は、共通の目的の達成や価値の実現のための協働体なのですから、もうひとつの評価原理は、「協働性(Cooperation)」、即ち、組織的な協働性をどれだけ自ら発揮し、また、引き出したか、ということです。
(2)評価=「態度」×「能力」×「実績」
上記の「協働性」と「貢献度」を、どのように具体的な評価の着眼点に展開するかについては組織(企業)によってさまざまであり、例えば「行動と成果」とすることも良く、「態度・能力・実績」としても良いでしょう。
①組織的な協働を促進する職務遂行上の「態度」
その人の職務遂行上の態度を着眼点にすれば(どういう態度が組織的な協働を促進し、どういう態度が組織的な協働を阻害するかを着眼点にすれば)その人の「組織的な協働性の高さ」は自明となります。
<組織的な協働を促進する態度と組織的な協働を阻害する態度>
□ 誠実性や勤勉性 ⇔ 不誠実または怠慢
□ 積極性(能動的・独立的・肯定的に) ⇔ 消極的・否定的
□ 主体性(自分で判断しながら) ⇔ 依存的
□ 責任感(言い訳や他責化をせず) ⇔ 無責任
□ 協調性(相互に理解協力しながら) ⇔ 無理解・無関心・非協力
□ 倫理性(社会公共的な利益を優先) ⇔ 非倫理的・反社会的
②組織的な協働において発揮される「能力」
職種毎のプロフェッショナル能力は当然必要ですが、組織的な協働を通じて(人と組織から理解と協力を引出しながら)それを発揮するためにはコミュニケーション能力およびそれに基づく対人関係能力が必要です。
また、組織(企業)におけるポジションのレベルに応じて、コミュニケーション能力および対人関係能力に基づくリーダーシップやマネジメントの機能が求められます。
□ 職種毎のプロフェッショナル能力_遂行‐判断‐指導‐管理のレベルに応じて
□ コミュニケーション能力および対人関係能力
□ 聴く力(積極的に傾聴し、肯定的に受容する力)
□ 理解する力(相手の言いたいことを理解する力)
□ 表現する力(言う力、書く力、描く力)
□ 伝える力(相手の疑問や興味に訴求する力)
□ 対話する力(相手の発言を促し、議論を進める力)
□ 気付く力(相手の感情に気づき、受容する力)
□ 配慮する力(相手の立場や利便を尊重する力)
□ 説得する力(相手の納得を得る力)
□ 合意形成する力(論点を明確にし合意に導く力)
□ 良好な人間関係を築く力
□ 理解・支持・協力を引出す力
□ リーダーシップおよびマネジメント機能(Ⅶ.「組織管理」参照)
□ Decision(判断・決断・選択)
□ Orientation(方向付け)
□ Motivation(動機付け)
□ Education(成長の促進)
□ Communication(意思疎通)
□ PDCA(Plan-Do-Check-Action)とEvaluation(評価)
□ Organization(組織化)とSuccession(継承)
③組織的な目的の達成や価値の実現への貢献度=「実績」
「目標管理制度」がドラッカーの提唱した「MBO (目標をもって自己管理的に仕事をする)」という趣旨にそって設計・運用されるなら(前出)「目標達成度評価」が「実績」評価として最適です。
難易度高・達成度大 … 評価S
難易度高・達成度中 … 評価A
難易度中・達成度大 … 評価A
難易度中・達成度中 … 評価B
難易度高・達成度小 … 評価B
難易度低・達成度大 … 評価B
難易度中・達成度小 … 評価C
難易度中・達成度中 … 評価C
難易度低・達成度小 … 評価D
達成度評価
S(期待を大きく上回る)
A(やや上回る)
B(ほぼ期待通り)
C(やや下回る)
D(大きく下回る)
人事評価シートの実用例については下記をご覧下さい。
<追記事項>組織の「評価」も個人の「評価」も根本は同じ
「組織」も「個人」も、ともに「評価」の対象になります。すなわち「組織」の評価とは、「その目的や目標や価値が一定期間内にどのように(またはどの程度)達成されたか(または実現されたか)」ということです。
それとともに、当該組織を構成する個人の評価とは、「組織の目的や価値の達成にどのように(どの程度)貢献したか」ということです。人事評価の要素を何におくかにかかわらず、人事評価の根本は、「組織への貢献度」です。