設問)「人が育ってこない…」という悩みの原因と対策は?
A1)「できること」と「やりたいこと」と「期待されること」のギャップが大きい?
本人の視点から見れば「できること」と「やりたいこと」と、企業や上司や職場や顧客から「期待されること」また、「今までやってきたこと(学識や実務経験)」とのギャップが少なく重なりが大きければ大きいほど良いはずです。
仕事をする上で「人が育つ」とうことは、そうしたギャップを少なく、重なりを大きくするための継続的努力であり、それへの支援です。年に一度はそうしたギャップと重なりを上司部下間で振り返ってみてはいかがでしょうか?
A2)「仕事のやりがい」に問題があるのかも知れない。
人や組織が「仕事」への動機付けを失なってしまえば、人や組織は育ちません。人や組織が「仕事」ことへの動機付けを高めるか、失なうかは、「仕事のやりがい」と「仕事のしやすさ」がどのような状態にあるかによります。
① 自分の仕事に目的や意義や価値を…感じる/感じない
② 自分の仕事に興味や関心、適性や能力を…感じる/感じない
③ 日々の仕事に目標感や達成感を…感じる/感じない
④ 仕事を通じて自己有能感・自己実現感を…感じる/感じない
⑤ 仕事を通じて感謝され、認められ、報われていると…感じる/感じない
⑥ 仕事を自分自身でコントロールできると…感じる/感じない
もとより、その仕事そのものが、次のようなものである場合、つまり、仕事そのものが人を動機付け、その成長を促進するのに相応しくない、という場合があると思います。そうした場合は、その仕事そのものを改善する必要があります。
① 過度な負荷や負担
② 危険や不快を伴う
③ 不正、違法、不当
A3)「仕事のしやすさ」に問題があるのかも知れない。
仕事自体には問題も不満もないが、仕事をする上での環境や条件が、仕事に対する人と組織の「動機付け要因」や「成長促進要因」を減損しているかも知れません。そうだとしたら、それらの環境や条件を改善する以外にはありません。
① 雇用の維持・継続に不安を…感じる/感じない
② 処遇(給与や職位など)に不満を…感じる/感じない
③ 環境(職場の快適性)に不満を…感じる/感じない
④ 仕事上の協働関係(上司・同僚・関係先)に問題を…感じる/感じない
⑤ その他心身の状況、家庭環境等に問題を…感じる/感じない
⑥ 仕事に関して周囲からの支援を受けていると…感じる/感じない
A4)「仕事のやりがい」と「仕事のしやすさ」のバランスの問題かも知れない。
「仕事のしやすさ」と「仕事のやりがい」との間には、まさに「車の両輪」のようなバランスが必要であり、特に「仕事のしやすさ」に対応が偏り、いわゆる「組織のぬるま湯化」に陥らないように注意が必要です。
人と組織から「成長」を引き出すには、やはり一定の「厳しさ」や「難しさ」が必要であると思います。職場のメンバーが「分かっているのに〜しない」「出来るのに〜しない」という現象に陥っていないかどうか、注意が必要です。
そもそもEducationとは、人や組織に何かを「付け加える」のではなく、そこから何かを「引き出す」ことです。「分かっている人」や「やれば出来る人」を見出して「実行」を引き出すことが「人と組織の成長を促進する」ことです。
A5)管理監督職の日常的なマネジメント行動が上手く機能していないのかも知れない。
職場の管理監督者が日常的なマネジメント行動の中で「人と組織の成長を促進する」ためにできることは、採用や退職以外にいくつもあり、下記を「習慣(当たり前)化」しているかどうかで「育つかどうか」の差が生じるでしょう。
① Communication
対人的なマネジメントの基礎として、部下との間に(職場の中で)日常的な双方向のコミュニケーションに基づく信頼関係を形成しているか。
② Orientation
部下に対して、組織として(職場として)仕事を通じて達成すべき目的・目標や実現すべき価値であるかを明確に指し示しているか。
③ Coaching
②の目的・目標の達成や価値の実現に向けて、部下の(職場としての)日常的な仕事ぶりを観察し、機をとらえて指導しているか。
④ Evaluation
③の観察や指導に基づいて、部下の(職場としての)仕事上の態度、発揮された能力、仕事の実績をフェアに評価しているか。
⑤ Motivation
④の評価の観点と結果を、部下に(職場に)適切にフィードバックし、部下の(職場としての)動機づけと成長の促進につなげているか。
上司-部下間に2wayのCommunicationに基づく信頼関係が成り立ち、達成すべき目標や実現すべき価値がOrientationされ、日常的なCoachingとそれに基づくEvaluationとそのフィードバックが行われ、Motivationに繋がっているか…
<追記事項_20210612_「仕事をすること」への自律と支援>
上記のマネジメントによって、結局は「人と仕事の関係」が、「従属から主体」に成長し、上記のマネジメントそのものも、他律的なマネジメントから、自律的なマネジメントに成長することが、「育つ」ということだと思います。
また、「組織協働的に仕事をする」ということは「周囲の理解や協力や支援を得ながら仕事をする」ということです。仕事をするうえで、いかに自律性を獲得し、組織的な理解や協力や支援を引き出すか…が「育つ」ということでしょう。