1.コミュニケーションの力は仕事の力
少なくとも「組織的に協働しながら仕事をすすめる」以上は、「コミュニケーション良く仕事をする」ことは必須要件であり、どんな仕事でも「上手く行く、行かない」は、「コミュニケーションが良い、悪い」に依存します。
<コミュニケーションの力>
① 聴く力
積極的に傾聴し、肯定的に受容する力
② 理解する力
相手の言いたいことを理解する力
③ 表現する力
言う力、書く力、描く力
④ 伝える力
相手の疑問や興味に訴求する力
⑤ 対話する力
相手の発言を促し、議論を進める力)
⑥ 気付く力
相手の感情に気づき、受容する力
⑦ 配慮する力
相手の立場や利便を尊重する力
⑧ 説得する力
相手の納得を得る力
⑨ 合意形成する力
論点を明確にし高レベルの合意を導く力
⑩ 指し示す力
リーダーとして組織を方向付ける概念化能力
⑪ 引き出す力
メンバーから理解・支持・協力を引き出す力
⑫ 統合する力
矛盾や相克を止揚してより高い次元の「解」を指し示す力
(説明)
「コミュニケーションの力」は、「仕事をする上での成長段階」に照応しています。仕事は「指示を受けてする」ことから始まりますが、「指示」の内容や意味や意図を理解することは最低限度のコミュニケーション力です。
仕事上の「相手」(上司・同僚・部下、関係者)との円満な人間関係・信頼関係を築きながら仕事をするためには①~⑨のレベル、指導力や管理力を発揮しながら仕事をするためには⑫のレベルまでのコミュニケーション力が必要です。
第一段階:具体的に指示された仕事を正確・迅速・丁寧に遂行する。
第二段階:包括的・一般的指示に基づいて、自ら判断しながら仕事をする。
第三段階:周囲から判断や指導を求められながら仕事をする。
第四段階:組織マネジメントまたは高度の専門性を通じて事業に貢献する。
2.先ず「聴く」ことが大事
上述のとおり、コミュニケーションの第一は、「聴く」ことです。相手の言うことが自分の認識や意見と多少違っていても、途中で遮らず、頭から否定せず、先ずは最後まで相手の言い分に耳を傾ける(肯定的傾聴)ことが第一です。
また、相手と視線を交えながら、反応(頷き、相槌など)しながら、メモをとりながら、興味と関心を持って(「!」や「?」を多く持って)聴く、自分の理解を復唱や質問などによって確認しながら聴く(能動的傾聴)ことが必要です。
さらに相手が「何を言っているか」という「言語的意味」にこだわり過ぎず、「(本当は)何を言いたいか(伝えたいか)」という、相手の「意図」や「目的」への感度を高めながら聴く(想像的傾聴・共感的傾聴)ことも必要です。
3.「何を言うか」よりも「どう言うか」が大事
自分が言いたいこと(伝えたいこと)を相手に的確に伝えるのは難しいことです。単に「言語的な伝達」だけでなく、場合によってはそれより多く、「視覚的な伝達」などの「非言語的な伝達」に依ることも必要です。
より良く伝えるためには、簡潔・明瞭・平易・正確に、文法的・論理的・具体的・実証的に言うことのほかに、視覚的に(図表化、一覧化、画像や映像などによって「見れば分かる」ように)言う努力・工夫・配慮・習慣が必要です。
4.「どう伝えるか(どう伝わるか)」がもっと大事
「伝える」ということは、ちょうど、相手の「脳裡」という「カンバス」に絵を描くのに似ています。自分が相手に伝えたい事を、言語的および非言語的諸手段という絵筆を使って相手の脳裡(カンバス)に描く、ということです。
言い方や表情や態度が異なれば、相手への伝わり方は異なります。自分と相手との関係によっても「どう伝わるか」は異なります。(「どう伝わるか」=「何を言うか」×「どう言うか」×「誰が(誰に)言うか」です。)
旧い中国の言葉に「和顔愛語」という言葉があります。「和やかな表情と優しい言葉」すなわち、「配慮に満ち、思慮に富む(ConsiderationとThoughtfulness)言動や態度で常日頃から人に接すること、すなわちGently Speakingです。
<追記事項20160618>何を言うかより、誰が言うかが大事
同じ「事実や意見」を言うのに、地位や信用や権威の有る人が言うのと無い人が言うのとではその効力が違います。自分の口から言うのと、相手の口から言ってもらうのとでも違います。
同じことなら、できるだけ地位や信用や権威のある人に言ってもらうこと、または自分自身がそうした地位や信用や権威を得ること、同じことなら自分の口からではなく、相手の口から言ってもらうようにすることが要諦のひとつです。
<追記事項20211117>むずかしいことをやさしく、やさしいことを面白く…
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」というのが井上ひさし氏(劇作家)の言葉です。
筆者はなかなかこの境地に達しませんが、せめて「むずかしがる」ことだけは慎もう、と思います。