1.人間関係の力は仕事の力
仕事の成否や成果は「人と組織」からどれだけ多くの理解や協力、支持や評価が得られるかどうかにかかっています。そのためには良好・円満なコミュニケーションとこれに基づく良好・円満な人間関係の維持・構築が必要です。
2.侵さないこと
良好・円満な人間関係を維持・構築するための第一は、「相手の人格を尊重Respectし、侵さないこと」です。下図に示す相手の「生存‐安定‐親和」の欲求はもちろん、「自尊」およぼ「成長と実現」の欲求を妨げてはなりません。
自 分 相 手
成長の欲求 ⇒ 自己実現
自尊の欲求
親和の欲求
安定の欲求
生存の欲求
自分と同じ(またはそれ以上に)相手は強固な生存欲求・安定欲求に支えられているのであって、これを侵す(脅かす)ようなことは論外であり、「親和の欲求」を侵す(仲間の輪を乱す)ような言動や態度は忌避されます。
自分と同じ(またはそれ以上に)相手は強固な「自己保全・自己肯定・自己尊厳」の欲求で支えられており、これを侵す(否定したり、軽んじたり蔑ろにしたりする)ような言動や態度は良好・円満な人間関係を確実に損ねます。
ただ人間は自己実現に向けた成長の欲求に動機付けられたときに、「自尊」の壁を超えて、「親和」の門を開くのでしょう。つまり、相互の自己実現に向けた成長の欲求に肯定的に関わり合うことが本来の「人間関係」です。
3.怒らないこと
「頭では分かっていても気持ちがおさまらず」不用意に相手との人間関係すなわち相手の「親和」および「自尊」の欲求を損ねてしまうことはよくあることですが、そうしないためには、既述の「EQ(情動的能力)」の訓練が必要です。
(再掲:ダニエル・ゴールマンの言う「EQ」とは?)
① 自分自身の情動を知る(自分が何をどう感じているのかを客観的に把握)
② 感情を制御する(不安や憂うつや苛立ちを振り払い感情を制御)
③ 自分を動機付ける(目標達成に向かって自分の気持ちを奮い立たせる)
④ 他人の感情を認識する(他人の感情をうまく受けとめる)
⑤ 人間関係を上手く処理する(他人との協調が必要な仕事をこなす)
様々な「負の感情(怒りなど)」をそのままぶつけ合っていては人間関係は成り立ちません。自分や相手の負の感情に気づいたら、それが争いになる前に(ひと呼吸置いて)上手く処理する(思い直す、受け流す)ことも必要です。
逆にお互いの「正の感情(興味・関心・意欲・肯定・好意・熱意など)」に注目しこれを上手く引き出し、組合せることに注力すべきです。「悪く思わず、悪く言わず」という指針は、良好な人間関係を築くためのポイントのひとつです。
4.怠らないこと
安直な自己保全・自己肯定感に囚われたままでは「自己実現に向けた成長の欲求」が満たされることはなく、自分に生じた負の感情を認識も制御もせず、そのまま相手への態度や言動に表すようでは未熟性から脱せません。
生来の気質や性格、一定の能力要素は自分の努力ではなかなか「変えられない」かも 知れませんが、それらを正しく自己認識し、上手く制御したり、上手く発揮したりすることで人間関係を維持向上する努力は出来るはずです。
<追記事項20160618> 「オコらず、オカさず、オコたらず」
人間関係を円満に形成し、保つための要諦は何でしょうか。まずは「相手へのRespectであると筆者は思います。「自分がそうしてほしいと思うように相手にもそうしなさい」「自分がしてほしくないことを相手にしてはならない」。
また、いわゆる「思いやり」(「恕」)は、相手の痛みや悲しみを自分の痛みや悲しみとして感じ取ることができるという人間的な感性や能力であり、「優しさ(=人を憂うる)」ことは人間関係(人間そのもの)の要諦です。
そういう意味で筆者自身は、「怒らず」(=相手の感情を尊重し、自分の感情を上手く制御する)「侵さず」(=相手の人格を侵さない)、「怠らず」(相手に望む以上のことを自分が修める)ことを自戒の言葉にしています。
また、「悪く思わず、悪く言わず」も人間関係の要諦のひとつです。人間、だれにでも何らかの「偏り」や「欠点」や「失敗」はあります。自ら省ることなく、ことさら相手や他人の足りざるところを論うのは人間関係を損ねます。