1.何のために「仕事をする(働く)」のかということ
生きることの目的がより「良く生きる」ことであるのと同様に、仕事をする(働く)ことの目的は、何かの手段であるだけでなく「より良く仕事をする(働く)」ことであるとしか言いようがないと思います。
そもそも人間にとって「労働=仕事をする(働く)」ということは、単に経済的な価値を得るためものではなく、もっと人間的・社会的に豊かな目的(例えば「平和」や「幸福」)を達成し価値を実現するということであるはずです。
そして個々の人間がばらばらに「労働=仕事をする(働く)」のではなく、「組織的・社会的に協働する」ことがその本質であって、そのことを通じてこそ、人間は自身をより人間的・社会的に豊かに成長させていくのでしょう。
2.仕事を通じて自分を成長させるということ
職種ごとの専門的ソリューション能力は必要ですが、そのためには、その基礎となる能力、すなわち、いわゆる「IQ」だけではなく、それを横軸とし「EQ(こころの知能指数)」を縦軸とする「SQ(社会的能力)」が必要です。
「SQ(社会的能力)」の中でも「コミュニケーション能力」は仕事を進める上で必須の能力であり、まさに「コミュニケーションの力」は「仕事の力」であり、これに基づく「人間関係の力」もまた「仕事の力」です。
また人事評価で何を評価するかは企業によって異なりますが、「態度・能力・実績」や「行動と成果」が評価されるのが一般的です。「態度」や「行動」の中では「誠実性」や「責任感」や「協調性」や「主体性」が重要です。
3.「仕事を通じて自分自身を成長させること」が仕事をする(働く)ということの意味
上記はあらゆる「仕事をする」上での共通的要素です。偶々「人事評価の要素になっていようがいまいが、ひとりの職業人として「当たり前のこと」であり、評価を得るためではなく、より良く(良い)仕事をする上で必要です。
実務の世界では「教場」や「机上」の理論や知識は、それだけではほとんど全く通用せず、「現場」での実践と検証が必要です。日々現実に生起する諸問題との悪戦苦闘や試行錯誤(理論と実践)の積み重ねこそが「仕事の力」です。
日々の学習を怠らず、日々の思慮を深め、日々の実践を通じて、自分自身を育成ること。「より良く(良い)仕事をする」ための学習・思慮・実践を通じて、自分自身を成長させることが「仕事をする(働く)」ということです。
4.仕事をすることを通じて成長段階を経て行く。
仕事を、「指示命令に服して賃金を得る」ための「労務や作業」に貶めてはならず、仕事の「目的」や「相手」、「価値」や「ニーズ」に対する想像力と創造力を高めることが、仕事の質の向上と自分の能力の向上に同時につながります。
仕事の基本は「正確・迅速・丁寧」であり、これが「品質・コスト・納期」につながります。特に「迅速かつプロアクティブ」であることは仕事の「競争力」にもつながります。また、「報・連・相」も仕事の「リテラシー」です。
以上のようにして、自分自身の「仕事をする(働く)」レベルを、「指示命令にって仕事をする」レベル⇒「判断しながら仕事をする」レベル⇒「指導しながら仕事をする」レベルへと段階的に成長させることが初めて可能です。
5.自分自身を動機付け、マネジメントするということ
「手段として仕事をする」のではなく、「仕事を通じて目的を達成したり価値を実現したりすること」そのものに動機付けられること、また、「他の誰かに動機付けられる」のではなく、「自ら内発的に動機付けられる」ことが重要です。
また、筆者は「究極の管理は自己管理である」と考えています。筆者が携わってきた「人事マネジメント」もひとつの「管理」ですが、その究極の目的も、結局のところ『自己管理(無管理)』を達成して自らの使命を終えることです。
本書で紹介した「動機付け理論」も「マネジメント」も、やがては「仕事をする(働く)」人々の「当たり前」のこととして実践され、それを通じて我々の組織や社会全体が真の「協働関係」に満たされることを、筆者は希求しています。
(おわり)