<追記事項_性格的傾向のビッグ5>
以下は「性格とは何か」(小塩 真司著・中公新書 p58)からの引用です。本稿では「性格」そのものを論じる趣旨ではありませんが、一般論として「性格」と言われるものの要素を捉えておく必要はあると思います。
① 外向性
② 神経症的傾向
③ 開放性
④ 協調性
⑤ 勤勉性
ただし、本稿の趣旨は、「性格よりビヘイビア(=言動や態度の選択)」が、仕事をする上ではより重要であり、それを通じて「生来的性格より社会的性格」を獲得し、形成していくことがより重要だということです。
<追記事項_20210816>
Behavior とは、その人の日常的・具体的な言動や態度のことです。ものごとに対する言動や態度の選択です。それは意識すれば今から変えることができます。それを習慣化すれば、社会的な Personality を変えることができます。
1.「自分」とは、具体的な言動や態度を通じて相手から見える「自分」
その人に「どういう能力があるか」は、その人からのOUTPUTを見て判定する以外にありません。これと同様に、その人の「気質・性格」は、その人の日常的・具体的な「言動や態度」から判定する以外にありません。
自分が他人のPersonalityを、その人の日常的・具体的なBehaviorから判定しているのと同じように、他人(相手や周囲の人々)は自分のPersonalityを日常的・具体的なBehaviorから判定しています。
例えば常日頃から誰に対しても優しく礼儀正しい言動や態度をとれば、他人(相手や周囲の人々)は自分を「優しく礼儀正しい人だ」と判定するでしょうし、怒ってばかりいれば「怒りっぽい人だ」と判定するでしょう。
他人(相手や周囲の人々)から見える「自分」と、自分自身が自覚している「自分」との間には、多少ギャップがあるかも知れませんが、少なくとも「仕事をする」上で重要な意味を持つのは、相手や周囲の人々から見える自分です。
また「人が得る情報の大半は視覚からの情報である」と言われ、「人は自分の第一印象を容易に改めない」ので、あとでどのように説明・弁解しようが、一旦相手や周囲の人々に印象づけられた「自分」像は容易には改まりません。
2.日常的・具体的な言動や態度Behaviorを変えれば、社会的なPersonalityが変わる。
ところで、ここで問題にするPersonalityとは、あくまで「人と組織との協働関係を通じて仕事をする上で必要な適性」という意味であり、「その人の日常的・具体的な言動や態度に見られる傾向や特徴」という意味です。
ここで重要なことは、「人と組織との協働関係を通じて仕事をする」上で、どのようなPersonalityがプラスに(促進要素として)作用し、どのようなPersonalityがマイナスに(阻害要素として)作用するかということです。
後掲の言動事例は、将来の「職場の中の困った人々」にならないためのチェックリストです。日常的・具体的などのような言動や態度(Behavior)が「人と組織との協働関係」を阻害するかがお分かりいただけるでしょう。
持って生まれた気質や、幼児期に形成された性格は、簡単には変えられませんが、日常的・具体的な言動や態度のひとつひとつは今すぐにでも改めることができるはずです。(例えば「誰に対しても分け隔てなく快く挨拶する」こと…)
ひとつひとつの日常的・具体的な言動や態度を改める、ということを意識的に継続することで、最初は苦痛だったことがやがて習慣化し、より好ましいPersonalityとして定着するはずです。(「習い、性となる」)
①未熟性を示す項目と問題となる言動や態度の事例
受動的;自ら発案・発言・発想・起動しない。依存、指示待ちや甘え。
自己中心;自分の都合、感情、価値観を優先させる。根拠のない自己優越感。
単純な行動;時と場、相手を考えない。
浅く移り気な興味;享楽的、その場限り。続かない。
短時間的展望;目標や展望がない。
自己認識の欠如;自分を客観視し、統制できない。
②パーソナリティー上の偏りと問題となる言動や態度の事例
風変り、社会的常識から遊離逸脱;服装や言葉使いの乱れ。
他者への無配慮や無関心・鈍感;無遠慮で失礼な態度。
情緒・言動・態度の不安定;落ち着きがない。すぐに不機嫌になり、怒り出す。
対人関係からの逃避;分け隔てなく挨拶や返事ができない。
極端な完璧主義、自分本位;自惚れ。傷付きやすい。他人に容赦なし。
③EQ上の問題となる言動や態度の事例
自分自身の情動を客観視できない。;特定の感情に支配されてしまう。
感情を制御できない。;苛立ちや怒りにまかせて振る舞う。
自分を動機付けられない。;何に対しても無気力。
他人の感情を認識できない。;ひとの気持ちへの配慮がない。
人間関係を上手く処理できない。;トラブルメーカー。
3.資質適性・能力適性・指向適性・行動適性
組織や企業とは「何らかの目的を達成し、価値を実現する協働体」ですから、そこで問われるのはそうした組織的協働への適性です。筆者はこれを、①資質適性、②能力適性、③指向適性、④行動適性という4つに整理しています。
①資質適性
持って生まれた気質や幼児期に形成された性格によって生じるその人の思考や言動や態度の特徴や傾向です。特に組織的協働と相容れないような偏りがないかどうかの自覚や振り返りが必要です。
②能力適性
TQ(募集職種における専門的能力)、IQ(知的能力、特に論理性)、EQ(情動的能力)およびこれらの総合であるSQ(社会的能力・コミュニケーション能力・ソリューション能力)が必要です。
③指向適性
本人が本当にやりたいと思っていること・本人が実際にできること・本人に期待されていること・本人が実際にやってきたこと・本人が実際にやっていることのAND(重なり)の大きさを拡げる努力が必要です。
④行動適性
いくら資質が豊かで、能力が高く、指向が強くても、いわゆる「態度」(例えば誠実性・主体性・責任感など)が悪くては組織的な協働には適しません。ここではそれを「行動適性」と呼びます。
<追記事項_20210608_適性の開発>
上記の四つの適性のうちで、「資質適性(持って生まれた気質や幼児期に形成された性格によって生じるその人の思考や言動や態度の特徴や傾向)」は、企業の人事マネジメントの実務上では、最も「変容しにくい」適性のひとつです。
それはその人の生来の気質や、それに基づく内外からの刺激に対するその人の反応のしかた、それに対する周りの人たちの対応、さらにそれに対するその人の反応、それらを通じて得られたその人の学習の積み重ねの結果です。
しかし、自律性と内発性を基本とする人事マネジメントが、その人の「資質適性」そのものを否定・排除・変容したりするのでなく、それを肯定的に受容し、前提とした上で、その先のより良い言動や態度につなげていくことは可能です。
それぞれの状況や場面ごとに、その先の、具体的な言動や態度について、その人とともに、同じ状況や場面に身を置いて、より良い結果を生じるより良い選択を行うことを通じて、新たな学習をすることは可能だろうと思うのです。
ましてや能力適性や指向適性や行動適性については、20年未満の学校生活に培われたそれらへの肯定に基づいて、その後の40年以上の職業生活を通じてより良い言動や態度につなげていくことは、より実現可能であるはずです。