働く人たちの「仕事」への動機付けを促進のも阻害するのも、その要因の多くは仕事そのものより、仕事を通じた人間関係、特に上司-部下間の関係にあります。では動機付けを促進する「上司-部下」関係とは…?
目的や意義・価値や目標の共有化
↗ ↘
上 司
評価のフィードバック ↑ ↓ 日常業務における観察と支援
部 下
↖ ↙
観察と支援に基づく適正な評価
(1)上司と部下の間に2WAYコミュニケーションと信頼関係が成り立っていること
これは全ての人間関係の基本です。 上司と部下の間にコミュニケーションが成り立っていなければならず、少なくとも指示・指導・支援と報告・連絡・相談の2WAYのコミュニケーションが成り立っていなければなりません。
上記の2WAYのコミュニケーションを基礎に上司-部下間に相互の信頼関係が成り立っていること。信頼関係とは「お互いが共通の理解のもとに、お互いの期待や信頼に応えることができる」という関係です。
(2)目的・目標・価値が共有化されていること
上司-部下間で、仕事上の目的が何であり、何を目標とし、どういう価値を追い求めようとしているかについて、日常的なコミュニケーションとそれに基づく相互理解・信頼関係が成り立っていなければなりません。
問われるのは上司のコミュニケーション力およびそれを基礎とするデシジョン力(何が目的・目標・価値であるかを選ぶ)とオリエンテーション力(それを明確に指し示す)とモチベーション力(それに向けて部下を動機付ける)です。
(3)上記のもとに日常的な観察と支援が行われていること
仕事上の目的や目標や価値は、日常的な業務遂行において常に念頭に置かれ、またそれに沿った業務遂行が現に行われ、日常的な業務遂行を通じて実現されなければ意味がありません。部下の努力とともに上司による観察と支援も必要。
上司は現場で何が起こり、部下が何に困っているかを知らなければならず、それに基づいて部下の業務が進捗するように適時適切な支援(指示や指導を含む)を行うべきです。
<追記事項>日々の小さな「進捗」とそれへの「支援」が働く人たちを動機付ける。
「95%の人が見逃す小さな進捗の力」…今までの人事マネジメントのテキストにほとんど現れなかったのが「小さな進捗とそれへの支援」という言葉です。(「マネジャーの最も大切な仕事」(テレサ・アマビール他、英治出版))
「小さな進捗」とは文字通り、働く人たちにとって、その仕事が日々少しずつであっても確実に「進捗」することであり、それが働く人たちを前向きに動機付ける最も重要なキーファクターであるという意味です。
「支援」とは、働く人たちを取り巻く人たちからの「支援」であり、中でも上司からの「支援」は最も重要です。「管理」「指示」「命令」「指導」…ではなく、上司からの「支援」こそが働く人たちを動機付けるという意味です。
(4)上記に基づいて適切な評価が行われていること
PDCAマネジメントサイクルでC(Check)のフェーズが極めて重要。同じく、上司-部下間のマネジメントサイクルにおいて、上司が部下の業務遂行状況を、仕事の目的や目標や価値に照らして「評価」することは極めて重要です。
「評価」は、上司が部下の日常的な業務遂行を「観察」し、それに基づいて「支援」することを通じて行うことによって初めて本人に対する動機付けに繋がる、信頼性と妥当性と納得性のあるものになります。
(5)上記の評価が部下に適切にフィードバックされること
上司による評価は、部下に適切にフィードバックされなければ意味ない。但し、高い評価がモチベーションを促進し、低い評価がモチベーションを阻害するわけでは必ずしもなく、「フェアな評価」がモチベーションを促進するのです。
「フェアな評価」とは、「絶対真正の評価」である必要はなく、より「信頼性・妥当性・納得性のある評価」であれば良いのですが、それも「評価」そのものによっては成り立たず、上記(1)~(4)を前提として成り立つのです。
<追記事項>人と仕事の組み合わせ、人と人の組み合わせを変えてみることも有効。
上記は、「部下と仕事」の組み合わせや「上司と部下」の組み合わせが一定であることが暗黙の前提ですが、もちろん、「部下と「仕事」の組み合わせや「上司と部下」の組み合わせ如何が部下のモチベーションを大きく左右します。
また、人と仕事の組み合わせが固定化・長期化するとマンネリに陥り、人と人の組み合わせが固定化・長期化すると馴れ合いに陥るおそれがあるので、やはり定期的・制度的に人と仕事、人と人の組み合わせを変えてみるべきでしょう。