設問)目標管理制度は有効に運用されているか?
A1)企業の業績が向上しなければ「目標管理制度」の意味がない?
企業や組織が達成すべき目的、実現すべき価値に向けて、その構成員を内発的に動機付けて自己管理するのが「目標管理制度」なのですから、「目標管理制度」を入れても企業や組織の業績が上がらなければ意味がありません。
「目標管理制度」が上手く機能していないということは「組織マネジメント」が上手く機能していないということです。(「業績が上がらない」のは「目標管理制度」に問題があるのではなく「組織マネジメント」に問題がある。)
以下にドラッカーによる「組織」の定義を引用(「P・Fドラッカー経営論集」ダイヤモンド社)しますが、この定義は「組織マネジメント」そのものであり、同時に「目標管理制度」の設計と運用の指針そのものです。
<組織とは…>
① 共通の目的と価値へのコミットメントを必要とし、
② 組織とその成員が、必要と機会に応じて成長、適応しなければならず、
③ あらゆる種類の仕事をこなす異なる技能と知識をもつ人たちからなり
④ 構成員は、自ら成し遂げるべきことを他の構成員に受け入れてもらい
⑤ 成果はつねに外部にあり、測定・評価・改善されなければならない。
組織である以上、そこには向かうべき目的や、達成すべき目標や、実現すべき価値があるはずで、組織に加入し、構成しようとする人たちにそうした目的や目標や価値へのコミットメントを求めることは当然です。
組織で「暮らす」人たち(組織に依存し安住する人たち)だけでは組織は成り立たず、それぞれのプロフェッショナリズムを持ち寄り、自らのアウトプットが他の最適なインプットとなるように連携し・協働し合うのが組織です。
「目標管理制度」は、単に「目標を管理する制度」ではなく、組織の向かうべき目的や達成すべき目標や実現すべき価値のために構成員の協働性を引き出すという組織マネジメントのツールなのです。
A2)目標設定のプロセスは適切か?
① 企業や組織の目標は明確化され、周知徹底されているか?
期(年度または半期、もしくは年)のはじめに、企業や組織の期間目標を明確化し、周知徹底することが必要です。目標は定量化できれば好ましいですが、無理に定量化するよりは、分かり易ければ定性的でも構いません。
その際、必ず、期首のどのような「状態」を、期末のどのような「状態」に引き上げるのかを明確に(これを「目標記述の状態表現」と言います)して、企業や組織のトップから直接、構成員全員に周知徹底して下さい。
② 企業や組織の目標は、共有化(理解・信用・支持・コミットメント)されているか?
目標設定(目標状態の決定)の方式は、トップダウン方式でもボトムアップ方式でもかまいませんが、企業や組織の構成員に広く遍く理解・信用・支持され、コミットメントされることが必要です。
それは、「組織管理の七つ道具」の、Decision, Orientaion, Motivation, Communicationの各稿で述べた通りであり、企業や組織の目標の共有化が出来ているかどうかは、企業や組織のマネジメントが出来ているかどうかの試金石です。
③ トップの目標が「~のためには」「~のためには」とブレイクダウンされているか?
企業の最上位の目標として設定された目標を達成するためには、各組織が何をすれば良いか、さらにそのためには各構成員が何をすれば良いかを各組織や各構成員の日常的で具体的な行動目標にブレイクダウンされていることが必要です。
例)企業として「営業利益率を**%にする」
⇒ そのために、各組織は何をすべきか?
⇒ そのために、各個人は何をすべきか?
それをどのように達成し、実現するかが、企業レベルのP⇒組織レベルのP⇒個人レベルのPにブレイクダウンされ、それぞれのレベルでのPDCAマネジメントサイクルを通じて徐々に成果が上がってくるはずです。
A3)目標達成のための日常的なPDCAマネジメントサイクルが廻っているか?
現実には、企業や組織の構成員の、日々日常の業務の隅々にまで、PDCAマネジメントサイクルが浸透し、定着しているわけではありません。「PDCAが廻っているか?」を合言葉に、職場の日常的な仕事ぶりを点検してみて下さい。
① 仕事を通じて達成すべき目的、実現すべき価値が明らかか?
② 課題や問題は「見ぬふり、置き去り、あと回し」されていないか?
③ 目的・目標・価値・課題のブレイクダウンと組織的共有化は十分か?
④ 定点観測による進捗管理が行われているか?
⑤ 評価がフェアに行われ、適正にフィードバックされているか?
…「定点観測」とは、目標達成の取り組みの原点や起点を揺るがすことなく定め、現状との比較において継続的に進捗状況の観察と評価(およびそれに基づくフィードバックを行うこと)を言います。