(1)組織や企業の現在の姿は過去のDecisionの結果
組織や企業は、人間的・社会的な目的を達成し、価値を実現するための協働体ですから、少なくとも、何を達成目的とし、何を実現価値とするかについて、組織や企業のトップマネジメントが判断・決断・選択しなければなりません。
① 目的 … その組織や企業にとって、何が共有すべき目的であるか。
② 価値 … その組織や企業にとって、何が実現すべき価値であるか。
③ 目標 … その組織や企業にとって、何が達成すべき目標であるか。
④ 正義 … 上記の目的や価値や目標に照らして、何が正しいか。
⑤ 当為 … 上記の目的や価値や目標に照らして、何を為すべきか。
組織や企業の現在の姿は、過去の無数の選択(多くは二者択一)の結果です。何を目的や価値と定め、何を目標として掲げ、何を正義および当為として選んできたか、という日々刻々の場面場面での判断・決断・選択の結果です。
経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間・情報)は常に有限であり、組織や企業の現在の姿は、その目的の達成と価値の実現のために、それらの経営資源をどのように投じ、費やしてきたかという、日々刻々の判断・決断・選択の結果です。
(2)トップマネジメントが行うDecisionに必要な要素
特に組織や企業のトップマネジメントが行うDecisionは、将来の組織や企業、個々の構成員の命運を左右します。そうした組織的なDecisionを行う場合には、少なくとも以下の要素が必要であると、筆者は考えます。
①適時性・先見性・実践性
Decisionが遅れた分だけ損失が何倍にもなったケースは歴史的にも日常的にも数多くあります。Decisionは、先見性を持って、行うべき時機に(適時に)行わなければならないというのが第一の鉄則です。
また、事が済んだ(人が行なった)あとからもっともらしい一般論を言うのは評論家や批評家の仕事であって実務家の仕事ではありません。実践にはDecisionが伴い、Decisionには実践が伴っていなければなりません。
②機関性・組織性・責任性
ボトムアップ型にせよ、トップダウン型にせよ、Decisionを行うべき権限と責任を委ねられた機関が、その見識と判断、その責任と権限に基づいて、行うべきDecisionを行わなければならない、というのが第二の鉄則です。
Decisionは「空理・空論」に惑わされてはならず、現状(現実)の「調査・分析・検証」が必要であり、それに基づく「意見や提案」も有効です。そしてそれらをふまえ、かつ、超えたところに初めてDecisionの権限と責任があります。
③合理性・指導性・統合性
Decisionは組織や企業を構成する大多数の人々から信頼や理解や支持や協力を引き出せるものでなければなりません。しかし必ずしもいわゆる合議制や多数決は組織や企業にとって最善の結果をもたらし、責任をとってくれません。
また、Decisionには「~ならば~である。なぜなら~だから。」という一定の「論理の力(合理性)」が必要ですが、それ以上に組織に向けて「~したい。~しよう。」と訴求する「意思の力(指導性・統合性)」が必要です。