組織管理の第二は組織の目的・目標・価値およびそれに沿って判断・決断・選択したことに向けて組織を方向付けることです。その方向付けは、いろんな意味で「正しい」ものでなければなりません。
(1)目的・目標・価値を指し示し、方向付けること
組織や企業は、その事業を通じて、人間的・社会的な目的を達成し、価値を実現するための協働体なのですから、達成目的と実現価値について、それぞれの組織や企業においてトップや管理職がメンバーに明確に指し示す必要があります。
さらに、組織や企業の目的を達成し、価値を実現する上で、何を目標として掲げ、何を正しいものとして判断し、何を為すべきこととして選択するかを、トップや管理職が、日常的な判断や選択としてメンバーに示すべきです。
いわゆる「概念化」が必要であり、抽象的すぎても具体的すぎても借りものの言葉でもいけません。企業のトップが替わるたびに変わるような言葉でも困ります。その企業の目的や価値を適確に表現する言葉であることが必要です。
(2)必要に応じて是正・修正・改善すること
メンバーの目的観や価値観は、個人によって方向や大きさの違いがあるかも知れませんが、トップや管理職は、メンバーに対して、組織や企業が指し示す目的や価値へのコミットメントを求め、必要に応じてその是正を求めるべきです。
またメンバー個々人の業務目標についても、メンバーの役割や能力等によって方向や大きさの違いがあるでしょうが、トップや管理職は、それらが組織や企業のベクトルに集約されるように、必要に応じてその修正を求めるべきです。
組織や企業の正義や当為は、人間的・社会的な正義や当為に沿ったものでなければならず、トップや管理職は、メンバーに対して、日常的な言動や態度が正義や当為に沿ったものになるように、必要に応じてその改善を求めるべきです。
(3)トップや管理職は「正しく」なければならない。
トップマネジメントや各層管理職は、決して聖人君子である必要はありませんが、何が人間的・社会的に「正しい」かを判断し、事業を通じて、また自らの言動や態度や実践を通じて、メンバーに示せるのでなければなりません。
「正しい」ことは、人と組織を適正に方向づけ、動機付け、成長させ、そうでないことは決して人と組織を方向付け、動機付け、成長させることはできません。当たり前のことですが、組織や企業の経営にとって最も重要なことです。
トップマネジメントによるオリエンテーションは、その基本的価値観において「ぶれない」ことが必要ですし、より多くのメンバーの理解と支持を得られる「明解さ」や適度な「抽象化(概念化)」も必要です。
<経営理念:「概念化」の事例>
例えばメルセデスベンツの「最善か無か」という理念や、松下幸之助氏(松下電器=パナソニックの前身)の「モノをつくるのではなくヒトをつくる」という理念は、いずれもより多くの理解と支持を得られる明解な概念化の例です。