採用から退職までの「人」のマネジメントのうち、退職管理(Exit Control)は、採用管理(Entry Control)およびその他の人事マネジメントプロセスと相互に連携して機能させるべきプロセスです。
採 用 → 目標管理(MBO) → 人事処遇
↑ ↓
退職管理 人(Human Resources) 育 成
↑ ↓
報酬管理 ← 人事評価 ← 就業管理
なかでも特に「採用」と「退職」の「バランス」が重要です。単純に言えば、「採用」で「採りたい人」が採れていて、「退職」で「辞めてもいい人」が辞めているか、という「バランス」です。(収入と支出のバランスと同じです。)
また、「退職」において、法違反や紛争に繋がる要素がないか、組織(企業)の雇用責任や育成責任が果たせたと言えるか、退職者の退職「理由」の中に、組織(企業)の管理にフィードバックすべき事項がないか、というのも重要です。
退職には下記のような諸形態がありますが、それぞれが退職する個人にとっても組織(企業)にとっても社会的・法的にも「適正妥当」に機能しているかという観点での管理が必要です。
本人都合による退職
① 依願退職
自然事象による退職
② 死亡退職
③ 定年退職
④ 休職期間の満了に伴う退職
会社都合による退職
⑤ 懲戒解雇
⑥ 普通解雇
⑦ 出向・転籍
③定年後の雇用延長や再雇用は適正に運用されているか、④休職と復職を繰り返すような実態はないか、⑤懲戒解雇や⑥普通解雇の要件や手続きは明確で適正に運用されているか(解雇すべき人が解雇されているか)等がポイントです。
(2)解雇及び雇い止めに関するコンプライアンス
①労働契約の二区分
労働者と使用者の間の雇用契約(以下「労働契約」という)の分類の中で最も重要な区分は、その労働契約が①期間の定めのない労働契約(無期労働契約)なのか、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)なのか、という二区分です。
ところで元々の民法の雇用契約の原則では、特約がない限り、無期雇用契約は、いずれか一方の当事者からの申入れ後2週間経過すれば終了し、有期雇用契約は、当該約定期間の満了によって当然に終了するのが原則です。
労働法令や労働判例においてはこのうち無期雇用契約の使用者から行う解約の申入れ(「解雇」)や、有期雇用契約の不更新(「雇い止め」)の要件や効力に関して労働者を保護するための修正が加えられています。
②解雇の予告
使用者から申入れて労働契約を終了させようとする場合には、民法の雇用契約の原則(申入れ後2週間で契約終了)に対する修正として「30日前の予告またはこれに代わる予告手当の支払」が義務付けられています。(労基法第20条)
③解雇の無効
解雇も退職も「契約の自由」のひとつですが、労働契約法第16条には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。
もともと解雇の効力を一般的に規制する定めはなく、解雇権制約の法理が判例で形成されていましたが、2003年に、労基法の18条の2として上記の規定が設けられ、そのまま2007年の労働契約法の中に受け継がれています。
では何が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」かについては、今までのいくつかの判例(特に最高裁判例)を参考にしていただくのが良いと思いますので判例集等でご参照ください。
高知放送事件 S52.1.31最高裁
東京海上火災保険事件 H12.7.28東京地裁
明治書院事件 H12.1.12 東京地裁
上記判例については下記をご覧下さい。